公開イベントではないので告知していませんでしたが、森林文化アカデミーでこんなフォーラムがあります。材料の枯渇や後継者の不在など、岐阜県内の工芸品づくりに共通する課題をみんなで共有しようというものです。県庁の地域産業課のご尽力によって実現します。

このフォーラム、いくつかの点で画期的です。
まず県と市、産業課と教育委員会という垣根を超えてみんなが集まること。伝統的なものづくりには産業課が工芸品として、教育委員会が文化財として関わります。今回は県の地域産業課が主宰ですが、県の教育委員会、岐阜市・関市の教育委員会の方々も参加されます。
そして、県内の多くの作り手やメーカーの代表者の方々が一同に会すること。岐阜提灯、美濃焼、美濃和紙、岐阜和傘、岐阜うちわ、のぼり鯉、山中和紙、東濃桧製神棚、鵜籠。これだけの方々が参加してくださるのは、このような集まりへの期待があるのだろうと思います。

昔から作られてきた工芸品は地域の宝もの。それをみんなで一緒に支えよう、という気運が生まれるか。私も期待しています。

森林文化アカデミーでは2/26(木)と2/27(金)の夜間に岐阜駅前の岐阜シティ・タワー43で駅前オープンキャンパスを開催します。森林文化アカデミーへの入学を検討されている方はこの機会にぜひお越しください。来年度入学希望者もまだ間に合います!

希望者はこのブログの下にあるフォームから登録をお願いします。締め切りは2/25(水)16:30までです。もちろん当日参加も可です。

(基本的にこのオープンキャンパスはクリエーター科希望者向けですが,エンジニア科希望の場合はフォーム下部の質問事項にその旨をご記入ください)

★駅前オープンキャンパス概要
場所:岐阜シティ・タワー43 2階 特設会場
JR岐阜駅に隣接,名古屋駅からも18分と近いです

2月26日(木)18:00〜20:00 林業再生講座,山村づくり講座
2月27日(金)18:00〜20:00 木造建築講座,ものづくり講座

18:00〜19:00 各講座の学びと進路について30分ずつ説明
19:00〜20:00 講座ごとに個別相談

★入試情報
1)森と木のエンジニア科 一般入試3
出願:2月10日(火)〜2月25日(水)【消印有効】
試験:3月7日(土)

2)森と木のクリエーター科 一般入試4
出願:2月10日(火)〜2月25日(水)【消印有効】
試験:3月8日(日)

3)森と木のクリエーター科 一般入試5
出願:3月2日(月)〜3月16日(月)【必着】
試験:3月22日(日)

入試に関して,詳しくは本学HPのトップにあるバナーをクリックしてください


「ものづくりと仕組みづくりゼミ」では、新しい価値を新しい仕組みを通して発信している事例から学ぶゼミで、これまでいくつか見学に行ったり、非常勤講師を招いたりしてきました。前回は、「工房からの風」のディレクターであり、ヒナタノオト代表の稲垣早苗さんにお越しいただき、「つくる」を伝える人の重要さについて、お話しいただきました。(⇒こちらからどうぞ)

今回お越しいただいたのは、株式会社和える 代表取締役の矢島里佳さん。

(矢島里佳さん オフィシャルブログより http://ameblo.jp/nadeshiko-rika/)

今回、矢島さんをお招きし、お伺いしたかったこと。
・なぜ和えるが始まったのか
・和えるをやるうえでのこだわりとむずかしさ
・これからの日本のものづくり

日本の伝統産業(←和えるでは伝統工芸とは呼ばない!)を子供たちに届けるという仕組みをどのように作り発展させてきたのか、これからものづくりをしていくアカデミーの学生にとって刺激ある話が聞けました。

ロゴマークに込めた熱い想い




話の出発地点は、和えるのロゴマークから。2つの大きな丸。赤の丸と七宝柄の丸。それが少しずれて配置されています。これは日本の伝統(日の丸)と現代の価値観(七宝柄)を「和える」様を表しているそうです。かつ現代の価値観に伝統的な和柄である七宝を入れたところがミソで、古くてもいいものはいい、いいものは古くならない、といった思いが込められているそうです。ルイヴィトンの柄が七宝柄からデザインされているように、昔は西洋の人たちも日本のデザインを最先端のデザインとして受け入れていたそうです。そういった日本の伝統を現代の感性で再定義し、再び日本人が日本に誇りを持てるようにしていく、といった熱い思いが込められているのです。


日本で生まれた赤ちゃんを日本のものでお出迎えしたい




そんな和えるの原点は「日本で生まれた赤ちゃんを日本のものでお出迎えしたい」という純粋な気持ちからスタートします。矢島さんの経歴については調べようと思えばいくらでも面白いエピソードが出てきますが、部活で取り組んだ茶華道やTV出演、そして大学時代での伝統技術の職人を訪ね歩いた話など、いくつかピックアップしても「伝統」が一つの軸になっているのが分かります。結局仕事をしようと思ったときに、それまでの見聞きしてきたこと、考えてきたことをそのままビジネスの仕組みに作りこんで行ったことが分かります。

「伝統産業」 x 「赤ちゃん・子ども」

これまでまったく接点がなかったこの2つの業界を「和える」(←混ぜるではない!)ことで新たな市場を開拓していきます。この一見相容れない業界もよくよく調べていくと非常に似通った産業構造をしていることに着目し、この2つを和えることで新たな価値が生まれることを感じていたそうです。

大事なことは、何をどの割合で「和える」といいのか、自分の好きなその和え方を”知っていること”だそうです。これを間違えると違和感を感じたり、矛盾が発生したりします。そしてさらに、切り口は「シンプル」であること。シンプルだけど多くを語れることが大事なのです。


時代の価値観は変わる。数から質へ。モノから感性へ




和えるが順調に成長していることは、時代の流れに逆らわず、うまくその流れをとらえているからともいえます。和えるの誕生は2011年3月16日。東日本大震災のまっただ中です。震災をきっかけに多くの人が「暮らし方」に目を向けるようになりました。

しかし、当たり前じゃなくなったことを、当たり前に戻すことは、非常に時間がかかる作業なんだといいます。だからこそ

・伝わりやすいものづくり
・語りたくなるストーリー
・欲しくなるデザイン

この3点セットは非常に大事だそうです。すべてにおいてこだわりを持ってつくることで、いいものだと感覚で訴え、大事にしたいという思いをもってもらうのです。

この3点セットを実行するうえで、和えるの目指す社会(ビジョン)を幹として、和えるの役割をしっかり定義しています。各地の職人との付き合いかた、取引先との付き合い方はそこからすこしでも矛盾が発生しないスタンスで仕事をしていきます。自らの立ち位置が定まっていないと、なあなあな部分が発生し、それがお客さんである「暮らし手」や和えるにかかわる人たちに違和感を与えていき、和えるというブランドが揺らいでしまいます。

3時間にわたる講義では、これからの時代の経営学、ブランド構築のエッセンスが凝縮されていたのです。


ビジョンと行動力



私自身が矢島さんの話を聞いて感じることは、ビジョンと行動力の両輪が効率よくかみ合っているということです。

矢島さんはまだ20代半ば。彼女だからこそはっきり明確に打ち出せた価値観の転換だったのではないかとも思います。上の世代とは感覚が違うものは違うんだときっぱりといって、新しい価値観に基づくビジネスの展開、会社のあり方、暮らしの提案ができたのではないかと思います。もちろん年齢だけをとってそういうわけではありません。彼女が体験してきたこと、育ってきた環境、そこから育まれた人柄。すべてにおいてそれが表れています。

思い描く「夢」と「目標」。「夢」を見ることは自由で、だれでも見ることができます。しかし、それを「目標」と定めたときに、自分自身に責任を負い、実行に移していく行動力。

多くの人が「夢」と「目標」をごっちゃに考え、さらに伴わなければならない行動ができず、頭で考えるだけで堂々巡りをしてしまいます。「半歩先行く経営」のために行動をいかに伴わせながら進んでいくか、矢島さんの言葉からはその実践者としての重みが伝わってきました。


授業後は、学生の手料理でのおもてなし交流会にも参加していただき、夜遅くまで語りあいました。その時間を通して、より深く矢島さんの人柄や考え方に触れることができました。このブログですべてを紹介することはできないのが残念です。

矢島里佳さん、貴重なお話ありがとうございました。


この「ものづくりと仕組みづくりゼミ」のように、ものづくり講座では、これまでのものづくりのあり方と、これからのあり方を両方学ぶカリキュラムで構成されています。古くも新しくも先人たちの知恵を学ぶことで、よりよい未来を築いていく近道を発見することになると思います。

(文責:ものづくり教員 和田賢治)



イギリスの籠作家ヒラリー・バーンズ Hilary Burnsさんが岐阜にやってきます。ご自身の活動についてご紹介いただくスライドショー・トークを行います。籠づくりや、工芸を通じたNPO活動に関心のある方、ぜひお越しください。どなたでもご参加いただけます。

日時:2/21(土)17:00〜18:30
場所:美濃市番屋2号館(501-3701美濃市2632番地1)地図はこちら
   徒歩2分のところに市営駐車場があります。地図はこちら
講師:ヒラリー・バーンズ氏(籠作家Basketry and Beyond代表)
通訳:久津輪 雅(岐阜県立森林文化アカデミー准教授)
申込:不要です。久津輪宛(mkutsuwa@forest.ac.jp)に「行きます!」とメールをくださると嬉しいです。




 ヒラリーさんはイギリス・デボン州のダーティントン(※)を拠点に、籠作家として、またNPOの代表として活動しています。
 籠作家としては、自ら育て収穫するヤナギのほか、ハシバミ、ナラ、トネリコなどの木を使った籠を制作しています。ウェブサイトに作品の写真が掲載されていますのでご覧ください。

 またNPOでは、バスケトリー・アンド・ビヨンドという団体を籠作家仲間たちと運営しており、さまざまな籠づくり講座を提供しているほか、海外へ技術指導に出かけたり、世界中から籠作家を招いてイベントを開いたりと、Basketry and Beyond(籠づくり、そしてその先へ)の名前の通り、多彩な活動を行なっています。facebookページにも活動がいろいろ載っています。

 ヒラリーさんと知り合ったのは、2013年にバスケトリー・アンド・ビヨンドのイベントに招かれたのがきっかけでした。「fishing farming fashion(漁業・農業・衣料)」をテーマに世界の籠を集めて展示会を開いたり、籠作家や職人を招いて実演や講座を行う企画ですが、長良川鵜飼の鵜籠づくりを継承していた森林文化アカデミー卒業生の鬼頭伸一さんや私(久津輪)が「漁業の籠」ということでイギリスに招かれたのです。

 行ってみて分かったことですが、これだけの規模のイベントをたった4〜5人の籠作家たちで企画し実行していました。助成金を獲得し、世界中の作家に連絡を取り、会場や宿泊先を手配し・・・ヒラリーさんの行動力には脱帽でした。
アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、日本・・・
世界中から集った籠作家や職人が実演を行なった
ミニ鵜籠作り講座でイギリスやデンマークの籠作家に
技術を教える鬼頭伸一さん
世界の籠とともに展示された
長良川鵜飼の鵜籠(前列右)と吐け籠(前列中央)



 今回はプライベートの来日ですが、岐阜に来られるので長良川鵜飼が行われる場所や、鵜籠づくりの作業場などをご案内しようと思っています。今回のスライドショー・トークは、その鵜籠づくりの作業場をお借りして実施します。
 ぜひお越しください。


※ダーティントンDartingtonは工芸運動の盛んなところです。民芸運動に詳しい方には、1952年に柳宗悦、濱田庄司、バーナード・リーチらが参加した国際工芸家会議が開かれた場所としておなじみです。持続可能な社会づくりのための教育機関、シューマッハー・カレッジがあることでも知られます

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岐阜県美濃市曽代88
tel/fax 0575-35-2525(代)
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