岐阜県立森林文化アカデミーでは、「エゴノキプロジェクト」を通じて全国の和傘づくりを材料の面から支えていることは、これまで何度もお伝えしています(詳しくはこちらをご覧ください)。和傘の材料確保がピンチ!ということで緊急プロジェクトとして始まってから3年。今では森林文化アカデミーの授業の一部になっています。

林業を学ぶ若い学生たちが11/23の伐採イベントの前に山に入り、一般参加者が伐採しやすいようマーキングをしたり、若いエゴノキを持続的に収穫できるよう太いものを伐採したりしました。

まずは柳澤先生から、エゴノキの見分け方の説明。サツマイモのような赤褐色の肌、縦じわがポイントです。

エゴノキプロジェクトの特長の一つは「伝統工芸材料の持続的な確保を、科学的な調査で支える」という点です。これらの調査も、学生が課題研究として行っています。そして先輩の研究が、後輩たちにとっての学びになります。

卒業生の水島寛人さんが在学中に取り組んだ調査を紹介(この日のために、休暇を取って駆けつけてくれました)。全国の和傘づくりのためには毎年500本を収穫する必要がありますが、持続的に収穫を続けられるかシミュレーションを行いました。


下の2枚のグラフがその結果。まず、和傘用の細い木(4~6cm)だけを伐り続けると、細いものが減ってゆき、和傘に適さない太いものだけが残るという結果が出ました。

そこで、和傘用には太すぎる木も更新を促すために伐採すると、森が若返り持続的に収穫が可能になるという結果です。


続いて2年生の山口将吾さんが、どのように伐採すると一番更新が促されるかの調査結果を説明。昨年、4つの区画で様々な伐採方法を試したのですが、山口さんはその切り株を一つ一つ調べました。
ここでは詳細な説明は省きますが、もっとも良い結果が出たのが「シカに若芽を食べられないよう高い位置で伐る」区画でした。1年前と現在の写真を比べてみます。
こちらが1年前に伐採した直後の写真。
そして今回の写真。たくさんの萌芽が見られます。ここから新しいエゴノキが育ちます。

和傘に適するのは直径が4~6cmのエゴノキです。一般の参加者がどの木を伐ればよいか分かりやすいよう、和傘用のエゴノキに赤い印を付けます。
一株からこれだけ密集して生えているエゴノキも!ほとんど和傘用に使えます。

そして和傘に向かない太いものは、更新を促すために伐採します。

今回伐採した太いエゴノキは、地元の林業グループ「山の駅ふくべ」のみなさんが炭にする予定。また、一部は私が椅子づくりに使ってみようと思っています。良い物ができれば、エゴノキプロジェクトのすそ野がまた更に広がります。


エゴノキプロジェクト2014は11/23(祝)。今回の準備作業のおかげで、きっとスムーズな作業ができると思います。










11月3日(祝)、恵那市で行われた「岐阜県文楽能大会」へ行ってきました。これは、文楽や能を伝承してきた地域を持つ中津川市・本巣市・瑞浪市・養老町・恵那市が持ち回りで1996年から毎年開いているもので、今年で19回目です。私は行くのは初めてでした。

以前「子ども歌舞伎」を行っている団体の数が岐阜県には11もあり、全国でも群を抜いて多いことが新聞に載っていましたが、文楽や能も含め、岐阜県が誇る郷土の伝統だと思います。


さて今回は岐阜県の各団体も良かったのですが、圧巻は徳島県からゲスト出演の「阿波木偶箱まわし保存会」でした。これは木箱に数体の木偶を入れ、天秤棒で担いで移動し、路傍で人気演目を演じた阿波の大道芸だということです。江戸時代から続き、明治初期に200人もの芸人がいたとあります。
1960年代に途絶えたと思われたこの芸能を保存会の人たちが調べていたところ、まだ最後の芸人が現存していることを知り、会員の方が3年間弟子入りして技術を学んだのだそうです。その直後にその師匠が亡くなり、ぎりぎりで伝統文化を継承することができたようです。

 下の写真2枚は「三番叟まわし」。元旦の午前0時から家々を回り、無病息災、五穀豊穣、商売繁盛を祈るもの。今も900軒(!)を回って福を届けるのだそうです。人形遣いが1人、鼓打ちが2人。鼓と合いの手が小気味よく、何ともおめでたい雰囲気。


 続いては、たくさんの人形を舞台に並べて人気演目のクライマックスをメドレーで演じる「箱廻し」。メドレーなのでテンポもよく、また通常の文楽と違い、人形遣いが艶やかな衣装で表情も豊かに演じます。



「日高川入相花王 渡し場の段」のクライマックス。姫の顔が一転・・・。



そもそも、岐阜県のイベントに徳島県からの団体がゲスト出演したのは理由があります。1951年に恵那市で旗揚げした「大井文楽」が、徳島県の人形師がかつて作った頭を使っていることが「阿波木偶箱まわし保存会」の調査で明らかになり、昨年(2013年)徳島市に大井文楽が招かれて82年ぶりの里帰り公演を果たしたのです。今回はその縁を深めるためのお返しの招待でした。

 その阿波の人形師「初代天狗久」の頭を使う恵那市の大井文楽の公演。「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」。


 太夫は元岐阜県職員でアクティブGの運営に長く携わられた三好さんです。晴れ姿を見させていただきました。素晴らしい語りでした。

この文楽能大会、来年は瑞浪市で開かれるとのことです。
残念なのは専用のホームページがなく、情報を得るのに苦労することです。空席もやや目立ちました。岐阜県が誇る伝統文化として、もっとPRして良いと思います。また、この公演は無料で行われているのですが(県の助成金を受けているためだと思われますが)、少額でも入場料を取るか、それが難しければ各団体の活動への寄付を呼びかけても良いと思いました。こうした伝統を支えるためにお金を出して良いと思う人はたくさんいるはずです。
来賓の挨拶は多かったのですが、保存会の人たち自身が保存活動について語る時間も欲しかったです。また、これらの地域の伝統をもっと多くの子供たちにも見てほしいと思いました。
これからも楽しみにしています。




 北海道の置戸町(おけとちょう)には、白い木肌と木目が美しい器やカトラリーなどの「オケクラフト」があります。これは1983年に工業デザイナーの故・秋岡芳夫さんが「新しい生活文化」を提唱し、チップや薪にしかならなかったエゾマツのアテ材を生活工芸品に生まれ変わらせたものです。

 町では作り手の研修制度も設け、オケクラフトセンター森林工芸館に町内外から49人の研修生を受け入れてきました。研修生の中から20の工房が生まれ、生産者として活動しています。

 この研修制度も発足から30年が経ち、町では新たな人材育成の体制づくりへ動き出しているそうです。

 森林工芸館の五十嵐勝昭館長やオケクラフトの生産者の方々が森林文化アカデミーを訪問されるのを機に、「オケクラフトの30年」と題した講演会をお願いしました。オケクラフトの写真とともにお話いただきます。学外の方も参加できますので、どうぞお越しください。

日時: 2014年11月11日(火) 17:00〜18:30
場所: 岐阜県立森林文化アカデミー・アトリエ棟ゼミ室A
講師: 五十嵐勝昭氏(オケクラフトセンター森林工芸館・館長)
申込み:こちらのフォームからお申込みください。


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