学校のブログで「飲み会」の告知を出していいのかどうか、ためらわれますが・・・(笑)。以前から行なっている、森林文化アカデミーと高山市の森林たくみ塾の合同学校説明会です。今年も東京での開催を企画していたところ、東京の会員制工房「Makers Base」さんが会場を提供してくれることになりました。「合同説明会」では堅苦しいのでドリンクを片手に「飲み会」形式で、会社勤めの人が帰りに立ち寄りやすいようノー残業デーが多い水曜日の夕方に、などいろいろアイデアを出していただき、こんなユニークな企画になりました。

森林文化アカデミーの木工教員・久津輪 雅と、森林たくみ塾の小木曽賢一代表が、それぞれの学校の特長や、学びの内容、卒業後の仕事の様子などをお話しします。
さらに、それぞれの学校を卒業して作家として活躍する2人のゲストも参加します。
そしてもう一つ!10種類の木を木目で見分けるミニ・ワークショップも実施します。

木工を本格的に学んでみたい、木工を仕事にしたいと思っている方、ぜひご参加ください。
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日時:2015年7月15日(水)19:00〜22:00
場所:Makers' Base 3階カフェテリア
費用:会員  1,620円
   非会員 2,700円
定員:20名
講師:小木曽 賢一さん (岐阜県高山市・森林たくみ塾代表)
   久津輪 雅 (岐阜県美濃市・岐阜県立森林文化アカデミー准教授)
ゲスト:神田 武蔵さん (63mokko・木のメガネフレーム作家・2013森林たくみ塾卒業生)
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    吉川 和人さん (木工作家・2014森林文化アカデミー卒業生)
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小木曽 賢一氏プロフィール

1991年 森林たくみ塾・2期生入塾。大学4年夏退学。人生の舵を大きく切り、木工の道へ。
1993年 有限会社つけち創工社入社。林業と木工、過疎地での暮らしを堪能。
1999年 Myanmar Tokiwa入社。鉛筆の加工・塗装技術を現地エンジニアに指導。
2002年 株式会社たくみ塾入社。生産管理、広報、環境教育プログラムの企画・運営を担当。
2010年 オークヴィレッジ株式会社・生産管理を兼務。
2014年 株式会社たくみ塾・代表取締役就任。
2015年 NPO法人ドングリの会・理事を兼務。広葉樹の森林づくりプログラム企画・運営。

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久津輪 雅 プロフィール

1986年 筑波大学国際関係学類に入学。
1991年 NHK入社。クローズアップ現代、NHKスペシャルなどの番組制作に従事。
1999年 NHKを退社、岐阜県高山市の森林たくみ塾にて木工を学ぶ。
2001年 イギリスに渡り家具職人として従事。イングランドの個人家具工房、
    ウェールズの地域材を用いた家具デザイナーのスタジオ、スコットランドの
    森林保護財団が運営する家具工房に勤務。
2006年 岐阜県立森林文化アカデミー勤務。
2010年 後継者のいなかった長良川の鵜飼道具をはじめとする竹細工技術の継承に着手。
2012年 岐阜和傘の材料確保や人材育成の支援を開始。

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いま、岐阜県中津川市で大量のクリの板を人力で剥ぐ(へぐ)作業が進行中です。市内にある地歌舞伎の芝居小屋「かしも明治座」で石置板葺屋根を復元する工事が行われており、長さ45センチ、幅7~8センチ、厚さ6~9ミリのクリの板がなんと8~10万枚も必要なのだそうです。8月末までにすべて完成させる必要があるそうですが、うまくへげないために苦労されており、まだ完成は1割ほどとのこと。

写真提供:中島創造さん(中島工務店勤務、森林文化アカデミー卒業生)

このため中津川市の加子母総合事務所の企画で、3/24(火)に高山市の「飛騨の里」で板へぎの講習会が行われることになりました。飛騨では昔からクリやネズコなどの榑板で屋根が葺かれており、飛騨の里では職人さんによる実演も行われているためです。講習会では88歳の山口末造さんが技術指導をされるとのことです。

ところでクリのへぎ板と言えば、グリーンウッドワーク。森林文化アカデミーの椅子づくり講座では、ちょうど同じぐらいのサイズの板をへぎ、背もたれに使っています。こちらも勉強になるし、こちらから何かお手伝いできるかもしれないと思い、まずは高山での講習会に参加させていただくことにしました。

かしも明治座、私も地歌舞伎を観に行ったことがありますが、素晴らしい建物です。グリーンウッドワークの技術が何かお役に立てば良いのですが。
(2013年撮影)

(2013年撮影)

講習会は以下の通りだそうです。関心ある方、特に今後お手伝いできそうな方は主催者の方に許可をいただきますので、久津輪までご連絡ください

日 時  平成27年3月24日(火) 午前9時から12時
会 場  高山市上岡本町1丁目590  飛騨民俗村「飛騨の里」
講 師  飛騨市 古川町 山口末造氏







3/11〜16に銀座三越で「清流の国 森の恵み大賞 入賞作品展示会」というイベントが行われます。ここに、森林文化アカデミーから木工分野の教員・久津輪雅と、林業分野の川尻秀樹教授が参加することになりました。
私、久津輪が担当するのは、グリーンウッドワーク体験。写真のような「削り馬」という道具を1台持参して、生の木を削る感覚を味わっていただきます。ふだんは森の中で楽しむ木工ですが、東京の真ん中ではどんな気分を味わえるでしょうか。楽しみです。


川尻教授からは「木と森の学習会」。聞きに来られた方に、岐阜県の木でできた良い香りの「あるもの」をプレゼントするそうです。こちらもお楽しみに。

せっかく東京に行きますので、森林文化アカデミーへの入学を検討している人や、森や木に関わる仕事に就きたい人からの相談も受け付けます。上のチラシをご覧になり、それぞれの教員のイベント時間中にお訪ねください。


「清流の国 森の恵み大賞 入賞作品展示会」
3/11(水)〜3/16(月)
10:30〜19:00
銀座三越9階 銀座テラス・テラスコート

清流の国・森の恵み大賞とは・・・
今、私たちの暮らしの中で「木を使う文化」が衰退しつつあります。
自然・伝統・文化を活かした「匠の技の素晴らしさ」を全国へ発信することで、「木の国・山の国」岐阜県が、埋もれていた森の恵みを発掘し「木の素晴らしさ」やこうした技術を守り伝える機運を高めるとともに、木工業界を担う人づくりにもつなげてまいります。


岐阜県立森林文化アカデミーでは、今春(平成27年度)入学を希望する人向けの入学試験を3月に実施します。木工や木育を仕事にしたいと考えている人は、ぜひ専門的な知識・技術を学んでください。
詳しくは、岐阜県立森林文化アカデミーHPを参照してください。

◯森と木のクリエーター科
定員20人 履修期間:2年

◆一般入試5
募集人数:若干名
出願期間:平成27年3月2日(月)~3月16日(月)【必着】
試験日:3月22日(日)
合格発表:3月23日(月)
試験会場は、岐阜県立森林文化アカデミー内(美濃市)を予定しています。

◆受験資格
大学卒業(見込み者含む)の資格を有する者、又は同等の実務経験者(「同等の実務経験者」とは、例えば、高校卒業後に4年以上の就職した社会経験があることなどを示します)

◆試験科目
小論文(800字程度)複数の単語から論題を作成して論述 50分
個別面接 10分程度
公開イベントではないので告知していませんでしたが、森林文化アカデミーでこんなフォーラムがあります。材料の枯渇や後継者の不在など、岐阜県内の工芸品づくりに共通する課題をみんなで共有しようというものです。県庁の地域産業課のご尽力によって実現します。

このフォーラム、いくつかの点で画期的です。
まず県と市、産業課と教育委員会という垣根を超えてみんなが集まること。伝統的なものづくりには産業課が工芸品として、教育委員会が文化財として関わります。今回は県の地域産業課が主宰ですが、県の教育委員会、岐阜市・関市の教育委員会の方々も参加されます。
そして、県内の多くの作り手やメーカーの代表者の方々が一同に会すること。岐阜提灯、美濃焼、美濃和紙、岐阜和傘、岐阜うちわ、のぼり鯉、山中和紙、東濃桧製神棚、鵜籠。これだけの方々が参加してくださるのは、このような集まりへの期待があるのだろうと思います。

昔から作られてきた工芸品は地域の宝もの。それをみんなで一緒に支えよう、という気運が生まれるか。私も期待しています。

森林文化アカデミーでは2/26(木)と2/27(金)の夜間に岐阜駅前の岐阜シティ・タワー43で駅前オープンキャンパスを開催します。森林文化アカデミーへの入学を検討されている方はこの機会にぜひお越しください。来年度入学希望者もまだ間に合います!

希望者はこのブログの下にあるフォームから登録をお願いします。締め切りは2/25(水)16:30までです。もちろん当日参加も可です。

(基本的にこのオープンキャンパスはクリエーター科希望者向けですが,エンジニア科希望の場合はフォーム下部の質問事項にその旨をご記入ください)

★駅前オープンキャンパス概要
場所:岐阜シティ・タワー43 2階 特設会場
JR岐阜駅に隣接,名古屋駅からも18分と近いです

2月26日(木)18:00〜20:00 林業再生講座,山村づくり講座
2月27日(金)18:00〜20:00 木造建築講座,ものづくり講座

18:00〜19:00 各講座の学びと進路について30分ずつ説明
19:00〜20:00 講座ごとに個別相談

★入試情報
1)森と木のエンジニア科 一般入試3
出願:2月10日(火)〜2月25日(水)【消印有効】
試験:3月7日(土)

2)森と木のクリエーター科 一般入試4
出願:2月10日(火)〜2月25日(水)【消印有効】
試験:3月8日(日)

3)森と木のクリエーター科 一般入試5
出願:3月2日(月)〜3月16日(月)【必着】
試験:3月22日(日)

入試に関して,詳しくは本学HPのトップにあるバナーをクリックしてください


「ものづくりと仕組みづくりゼミ」では、新しい価値を新しい仕組みを通して発信している事例から学ぶゼミで、これまでいくつか見学に行ったり、非常勤講師を招いたりしてきました。前回は、「工房からの風」のディレクターであり、ヒナタノオト代表の稲垣早苗さんにお越しいただき、「つくる」を伝える人の重要さについて、お話しいただきました。(⇒こちらからどうぞ)

今回お越しいただいたのは、株式会社和える 代表取締役の矢島里佳さん。

(矢島里佳さん オフィシャルブログより http://ameblo.jp/nadeshiko-rika/)

今回、矢島さんをお招きし、お伺いしたかったこと。
・なぜ和えるが始まったのか
・和えるをやるうえでのこだわりとむずかしさ
・これからの日本のものづくり

日本の伝統産業(←和えるでは伝統工芸とは呼ばない!)を子供たちに届けるという仕組みをどのように作り発展させてきたのか、これからものづくりをしていくアカデミーの学生にとって刺激ある話が聞けました。

ロゴマークに込めた熱い想い




話の出発地点は、和えるのロゴマークから。2つの大きな丸。赤の丸と七宝柄の丸。それが少しずれて配置されています。これは日本の伝統(日の丸)と現代の価値観(七宝柄)を「和える」様を表しているそうです。かつ現代の価値観に伝統的な和柄である七宝を入れたところがミソで、古くてもいいものはいい、いいものは古くならない、といった思いが込められているそうです。ルイヴィトンの柄が七宝柄からデザインされているように、昔は西洋の人たちも日本のデザインを最先端のデザインとして受け入れていたそうです。そういった日本の伝統を現代の感性で再定義し、再び日本人が日本に誇りを持てるようにしていく、といった熱い思いが込められているのです。


日本で生まれた赤ちゃんを日本のものでお出迎えしたい




そんな和えるの原点は「日本で生まれた赤ちゃんを日本のものでお出迎えしたい」という純粋な気持ちからスタートします。矢島さんの経歴については調べようと思えばいくらでも面白いエピソードが出てきますが、部活で取り組んだ茶華道やTV出演、そして大学時代での伝統技術の職人を訪ね歩いた話など、いくつかピックアップしても「伝統」が一つの軸になっているのが分かります。結局仕事をしようと思ったときに、それまでの見聞きしてきたこと、考えてきたことをそのままビジネスの仕組みに作りこんで行ったことが分かります。

「伝統産業」 x 「赤ちゃん・子ども」

これまでまったく接点がなかったこの2つの業界を「和える」(←混ぜるではない!)ことで新たな市場を開拓していきます。この一見相容れない業界もよくよく調べていくと非常に似通った産業構造をしていることに着目し、この2つを和えることで新たな価値が生まれることを感じていたそうです。

大事なことは、何をどの割合で「和える」といいのか、自分の好きなその和え方を”知っていること”だそうです。これを間違えると違和感を感じたり、矛盾が発生したりします。そしてさらに、切り口は「シンプル」であること。シンプルだけど多くを語れることが大事なのです。


時代の価値観は変わる。数から質へ。モノから感性へ




和えるが順調に成長していることは、時代の流れに逆らわず、うまくその流れをとらえているからともいえます。和えるの誕生は2011年3月16日。東日本大震災のまっただ中です。震災をきっかけに多くの人が「暮らし方」に目を向けるようになりました。

しかし、当たり前じゃなくなったことを、当たり前に戻すことは、非常に時間がかかる作業なんだといいます。だからこそ

・伝わりやすいものづくり
・語りたくなるストーリー
・欲しくなるデザイン

この3点セットは非常に大事だそうです。すべてにおいてこだわりを持ってつくることで、いいものだと感覚で訴え、大事にしたいという思いをもってもらうのです。

この3点セットを実行するうえで、和えるの目指す社会(ビジョン)を幹として、和えるの役割をしっかり定義しています。各地の職人との付き合いかた、取引先との付き合い方はそこからすこしでも矛盾が発生しないスタンスで仕事をしていきます。自らの立ち位置が定まっていないと、なあなあな部分が発生し、それがお客さんである「暮らし手」や和えるにかかわる人たちに違和感を与えていき、和えるというブランドが揺らいでしまいます。

3時間にわたる講義では、これからの時代の経営学、ブランド構築のエッセンスが凝縮されていたのです。


ビジョンと行動力



私自身が矢島さんの話を聞いて感じることは、ビジョンと行動力の両輪が効率よくかみ合っているということです。

矢島さんはまだ20代半ば。彼女だからこそはっきり明確に打ち出せた価値観の転換だったのではないかとも思います。上の世代とは感覚が違うものは違うんだときっぱりといって、新しい価値観に基づくビジネスの展開、会社のあり方、暮らしの提案ができたのではないかと思います。もちろん年齢だけをとってそういうわけではありません。彼女が体験してきたこと、育ってきた環境、そこから育まれた人柄。すべてにおいてそれが表れています。

思い描く「夢」と「目標」。「夢」を見ることは自由で、だれでも見ることができます。しかし、それを「目標」と定めたときに、自分自身に責任を負い、実行に移していく行動力。

多くの人が「夢」と「目標」をごっちゃに考え、さらに伴わなければならない行動ができず、頭で考えるだけで堂々巡りをしてしまいます。「半歩先行く経営」のために行動をいかに伴わせながら進んでいくか、矢島さんの言葉からはその実践者としての重みが伝わってきました。


授業後は、学生の手料理でのおもてなし交流会にも参加していただき、夜遅くまで語りあいました。その時間を通して、より深く矢島さんの人柄や考え方に触れることができました。このブログですべてを紹介することはできないのが残念です。

矢島里佳さん、貴重なお話ありがとうございました。


この「ものづくりと仕組みづくりゼミ」のように、ものづくり講座では、これまでのものづくりのあり方と、これからのあり方を両方学ぶカリキュラムで構成されています。古くも新しくも先人たちの知恵を学ぶことで、よりよい未来を築いていく近道を発見することになると思います。

(文責:ものづくり教員 和田賢治)



イギリスの籠作家ヒラリー・バーンズ Hilary Burnsさんが岐阜にやってきます。ご自身の活動についてご紹介いただくスライドショー・トークを行います。籠づくりや、工芸を通じたNPO活動に関心のある方、ぜひお越しください。どなたでもご参加いただけます。

日時:2/21(土)17:00〜18:30
場所:美濃市番屋2号館(501-3701美濃市2632番地1)地図はこちら
   徒歩2分のところに市営駐車場があります。地図はこちら
講師:ヒラリー・バーンズ氏(籠作家Basketry and Beyond代表)
通訳:久津輪 雅(岐阜県立森林文化アカデミー准教授)
申込:不要です。久津輪宛(mkutsuwa@forest.ac.jp)に「行きます!」とメールをくださると嬉しいです。




 ヒラリーさんはイギリス・デボン州のダーティントン(※)を拠点に、籠作家として、またNPOの代表として活動しています。
 籠作家としては、自ら育て収穫するヤナギのほか、ハシバミ、ナラ、トネリコなどの木を使った籠を制作しています。ウェブサイトに作品の写真が掲載されていますのでご覧ください。

 またNPOでは、バスケトリー・アンド・ビヨンドという団体を籠作家仲間たちと運営しており、さまざまな籠づくり講座を提供しているほか、海外へ技術指導に出かけたり、世界中から籠作家を招いてイベントを開いたりと、Basketry and Beyond(籠づくり、そしてその先へ)の名前の通り、多彩な活動を行なっています。facebookページにも活動がいろいろ載っています。

 ヒラリーさんと知り合ったのは、2013年にバスケトリー・アンド・ビヨンドのイベントに招かれたのがきっかけでした。「fishing farming fashion(漁業・農業・衣料)」をテーマに世界の籠を集めて展示会を開いたり、籠作家や職人を招いて実演や講座を行う企画ですが、長良川鵜飼の鵜籠づくりを継承していた森林文化アカデミー卒業生の鬼頭伸一さんや私(久津輪)が「漁業の籠」ということでイギリスに招かれたのです。

 行ってみて分かったことですが、これだけの規模のイベントをたった4〜5人の籠作家たちで企画し実行していました。助成金を獲得し、世界中の作家に連絡を取り、会場や宿泊先を手配し・・・ヒラリーさんの行動力には脱帽でした。
アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、日本・・・
世界中から集った籠作家や職人が実演を行なった
ミニ鵜籠作り講座でイギリスやデンマークの籠作家に
技術を教える鬼頭伸一さん
世界の籠とともに展示された
長良川鵜飼の鵜籠(前列右)と吐け籠(前列中央)



 今回はプライベートの来日ですが、岐阜に来られるので長良川鵜飼が行われる場所や、鵜籠づくりの作業場などをご案内しようと思っています。今回のスライドショー・トークは、その鵜籠づくりの作業場をお借りして実施します。
 ぜひお越しください。


※ダーティントンDartingtonは工芸運動の盛んなところです。民芸運動に詳しい方には、1952年に柳宗悦、濱田庄司、バーナード・リーチらが参加した国際工芸家会議が開かれた場所としておなじみです。持続可能な社会づくりのための教育機関、シューマッハー・カレッジがあることでも知られます
 突然ですがクイズです。
「和紙がユネスコ無形文化遺産に登録」というニュース、お聞きになった方も多いと思いますが、登録されたのはどんな紙でしょうか?

 このクイズにきちんと答えられる人は、極めて少ないと思います。森林文化アカデミーはこの紙が作られている美濃市にあります。そこで和紙の現状と課題を、ものづくり講座の教員と学生が学びに出かけました。
美濃和紙の里会館 船戸友数館長に解説していただく

 まず無形文化遺産に登録されたのは、美濃の紙だけではありません。岐阜県の「本美濃紙」、島根県の「石州半紙」、埼玉県の「細川紙」の3つです。さらに、登録されたのはこれらの和紙(モノ)ではなく、伝統的な手漉き和紙の制作技術です。
 こうした技術が世界的に評価されたこと自体はとても嬉しいことですが、現場で職人さんから話を聞くと、厳しい課題が浮かび上がってきます。

 ひとつは原料。
 無形文化遺産の紙は、国内産のコウゾのみを使います。本美濃紙では、最高級とされる那須楮(名称は那須ですが茨城県で生産)を使っているのですが、生産者が70〜80代で、今後10年以内に生産量が激減すると予想されるのです。
 そのため若手職人の中には、自らコウゾを育て始めた人たちがいます。しかし高品質の紙をつくるためには夏の間、コウゾの幹から出てくる脇芽を絶えず取り除かなければなりません。紙漉きだけでも大変な作業なのに、膨大な手間がかかります。
美濃の手漉き和紙職人が自ら育てたコウゾ
手漉き和紙工房「コルソヤード」の澤木健司さん
 もうひとつは道具。
 紙漉きには「簀(す)」という竹製の道具を使いますが、「本美濃紙」は竹ひごの継ぎ目が紙に写らないよう工夫された「そぎつけ」の簀を使うことが条件なのです。写真上が普通の簀、下がそぎつけの簀。竹ひごの太さはなんと0.5mm以下です。
上・通常の簀、下・そぎつけの簀
 1本1本を斜めにそいで継いであるのが分かるでしょうか。1枚の簀を作るのに2000〜3000本もの竹ひごをそがなければなりません。実は、これができる人がいないのです。というより、それだけの手間をかけられる人がいないと言った方が正しいかも知れません。
 美濃に現存するそぎつけの簀はわずか10本ほど。職人たちはそれを修理しながら使っているのが現状です。使えなくなってしまえば、もう本美濃紙は作れません。
そぎつけ
 美濃市で作られる和紙は「本美濃紙」だけではありません。他にもさまざまな手漉き和紙があり、機械漉きの和紙もあります。それらすべてを合わせて「美濃和紙」なのです。機械漉きの会社の方からは、これから原料の課題は手漉きと機械漉きの生産者が共同で取り組んでいくこともできるのでは、との心強い声もありました。
丸重製紙企業組合 専務理事・辻晃一さん
 こうした課題を共有し、美濃の紙づくりを支えていくため、ネットワークづくりを始めています。
 岐阜県庁の地域産業課、美濃市役所の産業課、美濃和紙の里会館、岐阜県産業技術センター紙業部、岐阜県森林研究所、そして森林文化アカデミー。まずは関係する公共団体のメンバーが集まり、美濃市で品質の高いコウゾを育てる研究や、一般の人に美濃和紙に関心を持ってもらう講座などを協力して取り組んでいこうと話をしました。森林文化アカデミーも、学生の実習などで関われそうです。
 これから更に、地元のコウゾ生産者、手漉き職人さん、機械漉きの会社の方たちにも輪を広げていきたいと思います。
 まずは現状を知り、いろんな人とつながり、みんなで支える「コウゾ・プロジェクト」へ、これからがんばります。
まずは写真をご覧ください。美しい木造の和船です。これを作ったのは、アメリカの大学生たち。そして教えたのも、何とアメリカ人の船大工です。

ダグラス・ブルックスさん。帽子のロゴにも注目。
ダグラス・ブルックスさんは、アメリカ・バーモント州在住の船大工であり和船の研究者です。これまで5人の日本人船大工のもとで和船の技術を学び、日本各地の和船の調査も行ってきました。森林文化アカデミーでも講義をしていただいたことがあります。

 日本の船大工は平均年齢が70歳以上とも言われ、技術の継承が危ぶまれています。長良川でも鵜飼漁をはじめとして和船が使われており、何とかしたいと思っているところです。そんな折、ダグラスさんがこの実習記録を送ってくれました。いずれこんな実習をアカデミーでも、との思いから紹介します。

 この実習が行われたのはバーモント州のミドルベリー大学。1月に「January Term」と呼ばれる集中授業があり、外部の講師が招かれるのだそうです。ダグラスさんは以前もこの大学でアメリカの伝統的な木造船づくりを教えていますが、今回は和船です。毎週4日、4週間の集中授業です。

 制作したのは、京都府の保津川の鮎舟と、岩手県の気仙川の川舟です。保津川の鮎舟は、ダグラスさんが2014年に京都府亀岡市で鮎舟をつくるワークショップを行なっており、その際に自ら寸法を調べ図面を引いたもの。気仙川の川舟は、和歌山大学の教員・学生が岩手県の船大工を訪ねて調査を行なった際に得た図面をもとにしているそうです。
その他に、ツヅミとかチギリと呼ばれる木片で板をつなぎ合わせるなど、日本の他の和船にみられる技術も盛り込んでいます。

 森林文化アカデミーには、車で30分以内のところに2人の現役の船大工さんがいます。1人は80代、もう1人は50代。今ならその2人から和船づくりを学ぶことができますし、記録を取ることも可能です。またそのような活動を通じて、学生の中から和船づくりを担う人が出てくるかもしれません。ぜひ実現させたいところです。

 なお和船技術の継承については、森林文化アカデミーが事務局となって全国の和船関係者を結ぶメーリングリスト「和船ネットワーク」を運営しています。まだ開設して1年ですが、全国で40人近い船大工や和船関係者が登録しており、情報交換が始まっています。関心のある方は登録しますので、ぜひご連絡ください。
→和船ネットワークお申込みフォーム

材料はノーザン・ホワイト・シーダーとホワイト・パイン。

舟釘は地元の鍛冶屋に作ってもらったもの。

土佐和船の会の芝藤敏彦さんが提供した舟釘をもとにしている。

板と板をぴったり接合するための「すり合わせ」の作業。

チギリ、ツヅミなどと呼ばれる木片を制作している。

沖縄のサバニ船などにみられる技法。

舟釘用の穴を開けている。

板どうしの接合面を金槌で叩いて圧縮しておく、「木殺し」と呼ばれる作業。

チョウナで板を削る。

日本式の祈りも教わる?

ノコギリですり合わせているところ。こうすることで2枚の板がすき間なく接合する。


板に反りをつけるために、つっかい棒で固定しながらの作業。

日本のカンナで削る。

完成!




森林文化アカデミー・ものづくり講座教員の久津輪です。
2/1(日)に東京で、「伝統工芸を支える〜長良川鵜飼と岐阜和傘」というテーマでミニトークをやります。
その日は森林文化アカデミーと森林たくみ塾の合同学校説明会なのですが、木工の分野に関心を持って何度も説明会に来てくださる方がいるので、何か毎回トピックを決めてお話をしてみようかということになったのです。そこで2/1は私がこのテーマでお話しします。

森林文化アカデミーではここ数年、岐阜県内の伝統工芸の継承をさまざまな形でお手伝いしています。1300年の歴史を誇る長良川鵜飼では、鵜を入れて運ぶための籠を作る職人に後継者がなかったため、森林文化アカデミーの卒業生が技術を学んで後を継ぎました。

また岐阜が日本一の生産量を誇る和傘は、材料のエゴノキを伐る人がいなくなり、森林文化アカデミーが地域の方々や全国の和傘職人とともに、エゴノキの持続的な収穫をお手伝いしています。また後継者の育成や、和傘を製造する機械設備の更新にも関わっています。

どれも試行錯誤の取り組みですが、伝統工芸に関心ある方はぜひ聞きに来てください。「そんなタイヘンなことになってたの!?」とびっくりする部分もあると思います。
学校説明会は13:00〜16:00ですが、その中の後半でお話しします。
入学したい訳ではないけど、話は聞きたいという方も歓迎ですよ(笑)。

2015年2月1日(日) 13:00〜16:00
オスモ東京ショールーム
160-0023 新宿区西新宿1-20-2 ホウライビル11F
地図


手仕事のものづくりに興味がある人は、全国各地で開催されているクラフトフェアなどに行かれたことがある人も多いのではないでしょうか?現在、びっくりするくらい多くの「クラフトフェア」と名がつくイベントがあります。その中でも有名なものとして10月に千葉県市川市で開催される「工房からの風」があります。


森林文化アカデミーのものづくり講座も昨年10月に学生と見学に行きました。その中で誰もが驚いたこととして「会場の一体感」「作家同士の連帯感」といったほかのクラフトフェアでは見られない”空気”でした。これはぜひその仕掛け人に話を聞いてみたい、ということで、「ものづくりと仕組みづくりゼミ」という授業で「工房からの風」のディレクターでありヒナタノオト 代表取締役代表の稲垣 早苗さんにアカデミーにお越しいただきました。なぜ「工房からの風」がはじまったのか、をはじめ「つくる」を伝える仕事についてその第一線を走ってきた稲垣さんの考えを講義いただきました。

また今回の講義については、アカデミーの在校生、卒業生のつながりもさらに深めていきたいと思い、アカデミー周辺にいる卒業生にも声をかけ、計6人の卒業生らが集まりました。

時代を通してものづくりの世界を見る



まず最初に稲垣さんが説明してくれたのは、工房からの風に至るまでの、稲垣さんの経歴でした。大学では文芸が専門で俳句などもやられていたのですが、卒業後金沢でお仕事をはじめ、そこで工芸に出会います。それから時間をかけて、個人作家が世に出ていく仕組み、作家同士をつなぐ仕組みづくりをされてこられました。興味深かったのは、どんな時代背景がそのときあったのかを合わせてお話しくださったことです。ものづくりは人の暮らしを形作っていくものです。バブル経済からその崩壊、そして工芸やクラフトの混迷の時代、時代を紐解いていくと、見えてくるものが変わります。

「工房からの風」は横の出会いと学びの場



2000年以降は、工芸に興味を持つ人が愛好家だけでなく、若い夫婦などにも広がっていったとのこと。より「暮らし」を大事にしていくという価値観が広がってきたのではないでしょうか。

現在のスタイルとして「工房からの風」が始まったのは2001年。作家が世に出ていく仕組み、作家とギャラリーやショップオーナーなどの伝えるプロとの出会いの場をつくる、そういった稲垣さんの思いを形にしたものです。特に、師弟関係がなくなった現代のものづくり、横のつながりをいかに築けるかが重要だったようです。

そのために、10か月前に出展者が決まると、それから数回出展者同士で集まる機会を設けるなど、イベントをみんなで作り上げ、作家同士で協力できるようにしていくそうです。それが会場で感じる一体感や連帯感につながっているのです。「工房からの風」は、仲間や仕事に出会える場であり、そしてさらなる学びを得られる場となっているのです。

伝える努力は常に必要



「工房からの風」ではチラシや小冊子が非常に充実しており、しかもその内容もとても深いものがあります。それは稲垣さんが「つくる」を「伝える」ということを重要だと考えており、作家さんにも文章を書くことを薦めています。作家さんは文章を書くことで自分の仕事を振り返り、そして整理していくことができます。そういった作り手自らの「言葉」を稲垣さんがまとめ、その世界観を作り上げているのです。

かつては、ギャラリーやショップなどには伝えるプロがいました。これは!という作家を見つけ、その作家について、作品について、多くの人に知ってもらう橋渡し役として機能していました。しかし、クラフトフェアにこれほど人気が集まってくると、お客さんは直接作家から買う機会が増えます。その時に自分の仕事がなんなのか、しっかり伝えられなければいけないのです。また、近年の雑貨店ブームもあり、「センス」や「見せ方」が上手なだけのお店が増えているそうです。そういうところでは作家に対しての対応が悪く、「売れるもの」だけを要求してくるようになります。そういうところに頼るようになると、本当にやりたいものづくりができなくなってくる作家さんも出てくるそうです。

「横のつながりを作り、そして商売がないところでも伝える努力をすることが重要。」稲垣さんの言葉にはとても重いものを感じます。

種蒔きと剪定



「工房からの風」の舞台となるニッケ鎮守の杜の庭造りを長年されてきた稲垣さん。講義では卒業生らの現在の仕事やこれからについてもアドバイスをいただきました。そのなかで将来を見据えて「種蒔き」をし「ゆっくり育てること」、必要なものは残り、不必要なものは消えること、自分の仕事の「軸」をどう育てていくか、稲垣さん流のアドバイスがありました。

「真ん中のしごと」。本当にやりたいものづくりは何なのか、常に考えながら日々の仕事に取り組みたいと、卒業生らも非常に感銘をうけたようです。


講義終了後はみんなでお昼ご飯を食べながら、さらに稲垣さんのお話に耳を傾けました。

ものを作るだけでは不十分で、それを伝えるところの仕事をいかにしていくか、稲垣さんの講義から多くのものを学んだように思います。

(文責:ものづくり教員 和田賢治)

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