松井が担当する授業です。近年、「木育」の需要が高まっています。地域の文化、人、風土を生かした木育のプログラムを組み立て、ものづくりの技術も用いて「森と人をつなぐ」教育活動ができる人材が求められています。そのため、森林文化アカデミーでは、子ども向けの木育プログラムを学生が考え、実施する機会を授業として設けています。

写真は、1年生が夏休みにスタッフとして関わる「親子木育ワークショップ」の様子です。まず事前に、何をつくる講座にするかを学生それぞれが考え、試作して、コンペを経てつくるものを決定します。そして講座全体の流れを考え、ただつくるだけでなく、講座を通して学んでほしい目標も設定します。そして本番でも学生がスタッフとして関わります。
今回は「水のわなげ」が選ばれました。実際の講座はどうだったか、詳しくはこちらからご覧ください。



芸術系、デザイン系、職業訓練系・・・それぞれに特徴

木工を仕事にしたいと思ったら、学校で専門的な知識や技術を身につける必要があります。ところが木工を専門的に学べる場所は、日本にはそれほど多くありません。大別すると、芸術・デザイン系の大学か、職業訓練系の学校に分かれます。

芸術系の大学では、実用的な小物や家具の制作もありますが、自己表現に重きが置かれます。工芸学科の一部に木工を学べるところがありますが、多くはありません。例えば東京藝術大学の工芸科には木工芸がなく、大学院の美術研究科に木工芸があります。

デザイン系の大学では、 家具デザイン学科やインテリアデザイン学科で木工を学べるところがあります。ここでは制作よりもデザインに重きが置かれ、また木は様々な素材の中のひとつとして扱われます。そのため必ずしも木工を集中的に学べるところばかりではありません。

職業訓練系は、高等技術専門学院、テクノスクールなど呼称は都道府県ごとに違いますが、いわゆる職業訓練校です。1年制がほとんどですが、北海道の旭川など2年制の学校もあります。地域の木工産業への人材供給が目的であったため、木工産業の衰退とともに全国的に統廃合が進んでいます。長野県の上松技術専門校などは、個人の木工作家も数多く輩出しています。

その他、特定の伝統技術を教える職人養成系の学校も存在します。例えば石川県加賀市の挽物轆轤(ひきものろくろ)技術研修所は、木工ろくろで作る漆塗りの器の後継者育成のための学校です。
また木工ではありませんが、大分県別府市にある竹工芸・訓練支援センターは、全国で唯一の竹細工の訓練校です。

岐阜県には特色ある4校

岐阜県には、木工を学べる学校が4つもあります。飛騨の匠の歴史を有する木工の県ならではで、全国的にもあまり例がありません。それぞれに特徴があるので、受験の際にはよく比較検討することをおすすめします。

岐阜県立森林文化アカデミーは全国でも珍しい、森林・林業系の学校を前身とする2年制の専修学校です。もちろん木工技術も学びますが、それだけではなく、林業、山村づくり、環境教育、木造建築を専攻する学生とともに多様な共通科目を学びます。また一人ひとりの進路に合わせて「課題研究」のテーマを決め、担当教員の指導を受けながら研究を行います。大学院的な学校であるとも言えます。
目標は
「森林資源に新しい価値を生み出せる人材」
「森林資源を生かす技術や知恵を継承できる人材」
を輩出することです。実際に卒業生たちが、木工や木育の技術を通してさまざまな価値を生み出しています。

民間の家具メーカーの関連校も2つあります。
高山市の森林たくみ塾は、家具メーカーのオーク・ヴィレッジのグループ校で、小物や家具など実際の製品を量産しながら技術を身につけるユニークな教育を行っています。月曜から土曜まで、密度の濃い実習が行われます。

高山市の飛騨職人学舎は、家具メーカーの飛騨産業が2014年に開学した、全寮制の職人養成学校です。技能五輪の受賞者を多数輩出する横浜市の秋山木工と提携し、高い技術と生活習慣を身につけた職人養成を目標に掲げています。

高山市の木工芸術スクールは、県立の職業訓練校です。高等学校を新たに卒業し就職をしようとする人や、転職や再就職を希望する人が、木工の技術習得のための訓練を受けています
岐阜県はかつて家具に使われる広葉樹を多く産出してきました。今ではその量は減りましたが、日本有数の丸太市場や、高級材を扱う銘木商が、いまも岐阜県内にいくつも残っています。

森林文化アカデミーでは地の利を生かし、このような市場や銘木商を見学して、木材の流通経路を学びます。卒業後に自分で材料を仕入れる上で、必ず役に立つ実習です。

また、広葉樹の森を実際に手入れして育てながら、間伐した木を自ら製材、乾燥させ、小物や家具づくりに生かす実習も行っています。

生きた樹が、材料となり、作品となる、その一連の過程をすべて体験できるのは、森林文化アカデミーならではです。
久津輪が担当する授業です。グリーンウッドワークとは、「人力の道具を使い、生の木を割ったり削ったりして小物や家具をつくる」木工です。ふつう木工を教える教育機関では、乾燥させた板を使い、機械や電動工具で加工します。生の木を直接削るような体験はありません。森林文化アカデミーでは、ものづくりが森林や環境と直接つながっていることを感じてもらうために、また先人たちが木とどう付き合ってきたのかを学んでもらうために、この昔ながらの木工を取り入れています。

写真は、森林文化アカデミーの敷地内で伐採した木から、箸づくりをしたときの写真です。
材料は、木造建築講座の実習で学内に新しい建物を建てる際に伐られた、リョウブ、サカキ、ソヨゴ、アラカシ、コシアブラなどです。ふだん家具づくりには使わない樹種で、直径も小さなものでした。しかし、グリーンウッドワークならこんな材料も生かせます。
これを割って、削って、形を整え、最後は漆を塗って仕上げました。
生きている木が、暮らしに使われる道具に生まれ変わるまで、一連の流れを体験しました。

グリーンウッドワークは、飛騨の大手メーカーでつくる飛騨木工連合会の技術研修に取り入れられるなど、高く評価されています。







森と木の仕事セミナー in 岐阜
2015年1月4日(日) 9:50〜16:00
じゅうろくプラザ(JR岐阜駅前)研修室1

 岐阜県立森林文化アカデミーは、森や木に関わる仕事への就職・転職を考える人を対象にセミナーを開催しています。森林・林業、山村活性、環境教育、木造建築、木工・木育の分野について、現在抱える課題や取り組み、就業へのルートや、就職・転職にあたって学ぶべきことなどを各講座の教員が解説します。

 少人数でじっくり話を聞くことができ、進路選択に役立ったと好評のセミナーです。1月4日の岐阜市の回は、冬休み中で参加しやすい時期であることから、既に20人近いお申し込みをいただいています。

 12月26日まで受け付けています。森や木に関わる仕事へ進もうとお考えの方、ぜひお申し込みください。こちらのフォームにご入力ください。

ものづくりの仕事は、暮らし方の提案でもあります。そのため、暮らしの道具を自ら作り、実際に使い、さらにその使い勝手を吟味し、新たな制作に挑むというプロセスが重要です。ものづくり講座では在学中の2年間で20品目近い暮らしの道具を作り、普段の学生生活で繰り返し使っていきます。自らの暮らしが学びの原点になっていくのです。

制作課題の例


箸箱
箸置き
スプーン
まな板
鍋敷き
時計
木の器(皿、椀)
おもちゃ
正月飾り
曲げわっぱ
竹籠
スツール
椅子(グリーンウッドワークの椅子、ウィンザーチェア)
テーブル
学習机



森林文化アカデミーでは、身近な森の木や竹を使うことにこだわります。森の手入れで出てくる間伐材など、決して高級な材料ではありませんが、デザインや機能を考え抜いて商品として販売できるレベルのものをつくります。良いものをつくることで、地域の人の暮らしを豊かにし、森を豊かにすることにつなげます。

写真は、森林文化アカデミーがある美濃市で「ファーストトイ」として新生児に配られた木のおもちゃ、「うだつみき」。森林文化アカデミーの在校生が美濃市の「卯建(うだつ)のあがる町並み」をモチーフにデザインを考え、美濃市内のヒノキ間伐材で試作しました。量産は美濃市内にある森林文化アカデミー卒業生の工房で行われ、在校生が制作を手伝いました。

 森林文化アカデミーでは、伝統的なものづくりを継承する活動に力を入れています。昔から使われてきた生活道具は、その多くが木や竹や蔓など、身近な森の資源で作られてきました。まさに森林文化の蓄積なのです。

 上の写真は提灯の制作行程の見学。岐阜県には、和傘や提灯など特産の和紙を使った工芸品があり、日本一の生産量を誇ります。学校の恵まれた立地を生かし、このような周囲の工房を見学して回ります。

上の写真は和傘のある部品を作る、日本でただ1ヶ所の木工所です。この木工所も岐阜市の近くにあります。ここでは、部品の材料である「エゴノキ」を伐る人が亡くなってしまい、生産が途絶える危機に瀕しました。そこで森林文化アカデミーが中心となって、エゴノキの森づくりや収穫にも関わっています。それが冒頭の写真です。(エゴノキプロジェクトを参照)


 森林文化アカデミーの学生の中には、こうした伝統工芸の後継者を志す学生もいます。上の写真は、和傘の部品を新しい加工方法で作る研究を学生が行っている様子です。

「ものづくり」だけでなく、「森づくり」や「人づくり」を通じて地域が誇る森林文化を支えています。

森と人との関係をもう一度問い直す。そのためには、木でつくる体験が有効です。ものづくり講座では、森を守るためには川下の人づくりと仕組みづくりが重要であると考えます。そのためのプログラム開発、講座の企画から運営まで学びます。教材開発のためには、確かな木工技術と、木と樹の知識があって初めて可能になるのです。


プロフィール

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このサイトは岐阜県立森林文化アカデミー准教授・久津輪 雅が開設しています。

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岐阜県美濃市曽代88
tel/fax 0575-35-2525(代)
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