レタートレーができました!: さて、先日 ものづくり講座1年生ので木工機械の授業が始まったという記事 を書きました。 その後、試行錯誤を繰り返し、さまざまなミスも経験し、やっとレタートレーが完成しました。 (前回の記事ではレターケースと書きましたが、正確にはレタートレーです) 初めて大型木工...
ものづくり講座では2年生になると、ウィンザーチェアを作ります。17世紀にイギリスで生まれた、庶民のための木の椅子です。
なぜウィンザーチェアなのか。ここは「森林文化」と名のつく学校なので、実習の課題はこの地域で使われてきた生活道具に因んだり、地域の材料や文化を生かすことを心がけています。ところが椅子となると、日本には古い歴史がありません。そこで、西洋で古くから作られてきたもの、木の特性を生かしたもの、日本へも早くから紹介されて影響を与えてきたもの、としてウィンザーチェアを選んでいます。

出典:「現代の木工家具」東京国立近代美術館図録


お手本にしているのは、ウィンザーの名手として知られた故・村上富朗さんのサックバックチェアです。板の座面の成形(カンナで削る)、脚の旋盤加工(材を回転させながら削る)、丸ホゾ穴あけとホゾ加工、肘かけの曲げ木など、木工の基本的な要素が詰まっています。

5月から制作に取り組み始めています。
初めに行うのは肘かけと背の曲げ木。
椅子の主要部分はクリを使っていますが、肘かけと背だけは曲げに強いナラを使います。しかも節などがなく真っ直ぐなもの、乾燥しすぎていないもの(含水率20%程度)、を選ぶのがポイントです。



上の写真は曲げ木の様子。今年から曲げの道具を改良し、ウィンチで引っ張ることにしたので、ラクラク曲がり、非常に歩留まりも高かったです。材は30〜40分蒸すだけです。



ウィンザーチェアの伝統的な作り方、手回しドリルによる穴開けです。
こんな加工で正確な角度で穴が開けられるのか、と思うかもしれませんが、多少の狂いがあるのを無理やり組み立てることで、逆に緩みにくくもなるのです。

柔軟性のある木だからこそできる技術であるとともに、長年の人力加工によって蓄積された技術であると思います。

ウィンザーチェア制作の様子を、時折お知らせしていきます。

ものづくり講座1年生 木工機械を使い始めました。: クリエーター科1年生が専門分野に分かれてから1か月。ものづくり講座は4名のものづくらーが新しく加わりました。彼らはこの1か月、鉋や鑿といった木工の基本となる手工具の仕込みや使い方などを学び、そしてスプーンづくりなどを通して、感性を磨き始めました。 そして、6月に入ってからは、...
ものづくり講座教員の久津輪です。
6月6〜8日に名古屋で行われる「木工家がつくる自分のための木の椅子」展に、この椅子を出品します。名付けてリョウブのレジェーラ(軽椅子)。きょう(6月3日)やっと完成しました!
一見すると普通の椅子に見えますが、実は、こんな特徴があります。

1.使用したのは直径わずか12cmのリョウブです。
2.材料の伐採、運搬、加工、仕上げまで、すべて人力で行いました。
3.接着剤を使わず、木の収縮する力を生かして組み上げました。

今回のいちばんのテーマは、里山の細い木を椅子づくりに使えるか?ということでした。
森林文化アカデミーの林業系の教員や地域の方たちから「里山の小径木をもっと有効利用できないか」という声を聞き、日本全国に育ち資源量も豊富なリョウブで椅子ができるか試してみたのです。
椅子にのせているのが、今回使ったリョウブの根元部分です。これだけ細い木から、椅子ができることが分かりました。


デザインは、2つの椅子を参考にしています。
写真左がイタリアの建築家、ジオ・ポンティのデザインした著名な椅子、スーパーレジェーラ(超軽量椅子)。写真右がアメリカの木工仲間、ドリュー・ランズナーさんに作り方を学んだグリーンウッドワークの椅子です。
去年この2脚を並べてみた時、シルエットが似ているなと思ったのです。また、右の椅子は背板が幅広いのでそれなりに大きな木が必要なのですが、左の椅子の背板なら小径木でも作ることができます。そこで、グリーンウッドワークの手法でスーパーレジェーラを作ろうと考え、できたのが今回の作品です。


はじめての試みでしたが、まずまずの出来栄えです。座面を大きくしたこともあり、座り心地はゆったり、軽やか。椅子の重さは約2.5kg、小さな子供でも楽に持てます。

「木工家がつくる自分のための木の椅子」展では、出品作に座ることができます。ぜひリョウブのレジェーラの座り心地を味わってみてください。
また6月8日10時からは、椅子研究の第一人者、武蔵野美術大学の島崎信名誉教授が1脚ずつ出品作にコメントされる予定で、椅子に関心ある方にはとても興味深いお話が聞けると思います。私も恐る恐る、コメントをいただきに行ってきます。

この椅子、更に発展させて、いずれ生涯学習の椅子づくり講座で実施します。楽しい椅子づくりを通じて、里山に人の手が入り、樹木が有効に使われていくといいですね!

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