まずは写真をご覧ください。美しい木造の和船です。これを作ったのは、アメリカの大学生たち。そして教えたのも、何とアメリカ人の船大工です。
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ダグラス・ブルックスさん。帽子のロゴにも注目。 |
ダグラス・ブルックスさんは、アメリカ・バーモント州在住の船大工であり和船の研究者です。これまで5人の日本人船大工のもとで和船の技術を学び、日本各地の和船の調査も行ってきました。森林文化アカデミーでも講義をしていただいたことがあります。
日本の船大工は平均年齢が70歳以上とも言われ、技術の継承が危ぶまれています。長良川でも鵜飼漁をはじめとして和船が使われており、何とかしたいと思っているところです。そんな折、ダグラスさんがこの実習記録を送ってくれました。いずれこんな実習をアカデミーでも、との思いから紹介します。
この実習が行われたのはバーモント州の
ミドルベリー大学。1月に「January Term」と呼ばれる集中授業があり、外部の講師が招かれるのだそうです。ダグラスさんは以前もこの大学でアメリカの伝統的な木造船づくりを教えていますが、今回は和船です。毎週4日、4週間の集中授業です。
制作したのは、京都府の保津川の鮎舟と、岩手県の気仙川の川舟です。保津川の鮎舟は、ダグラスさんが2014年に京都府亀岡市で
鮎舟をつくるワークショップを行なっており、その際に自ら寸法を調べ図面を引いたもの。気仙川の川舟は、和歌山大学の教員・学生が岩手県の船大工を訪ねて調査を行なった際に得た図面をもとにしているそうです。
その他に、ツヅミとかチギリと呼ばれる木片で板をつなぎ合わせるなど、日本の他の和船にみられる技術も盛り込んでいます。
森林文化アカデミーには、車で30分以内のところに2人の現役の船大工さんがいます。1人は80代、もう1人は50代。今ならその2人から和船づくりを学ぶことができますし、記録を取ることも可能です。またそのような活動を通じて、学生の中から和船づくりを担う人が出てくるかもしれません。ぜひ実現させたいところです。
なお和船技術の継承については、森林文化アカデミーが事務局となって全国の和船関係者を結ぶメーリングリスト「和船ネットワーク」を運営しています。まだ開設して1年ですが、全国で40人近い船大工や和船関係者が登録しており、情報交換が始まっています。関心のある方は登録しますので、ぜひご連絡ください。
→和船ネットワークお申込みフォーム
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材料はノーザン・ホワイト・シーダーとホワイト・パイン。 |
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舟釘は地元の鍛冶屋に作ってもらったもの。 |
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土佐和船の会の芝藤敏彦さんが提供した舟釘をもとにしている。 |
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板と板をぴったり接合するための「すり合わせ」の作業。 |
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チギリ、ツヅミなどと呼ばれる木片を制作している。 |
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沖縄のサバニ船などにみられる技法。 |
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舟釘用の穴を開けている。 |
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板どうしの接合面を金槌で叩いて圧縮しておく、「木殺し」と呼ばれる作業。 |
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チョウナで板を削る。 |
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日本式の祈りも教わる? |
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ノコギリですり合わせているところ。こうすることで2枚の板がすき間なく接合する。 |
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板に反りをつけるために、つっかい棒で固定しながらの作業。 |
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日本のカンナで削る。 |
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完成! |